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『俺、鳩川だから!』
・第1話 <バッドボーイと不良>
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「クヮー!
やっぱモトリー最高だー!
来日まで待てないぜー!」
入学したばかりの高校の休み時間。
ツカサは大きな声でそう叫びたいのをグッとこらえ、机にうつぶせになって、その新しいロックンロールを轟かせているウォークマンを握りしめていた。
「おい、お前何聴いてんの?」
そんなツカサにシュウが声をかけてきた。
比較的洗練されているとはいえ、シュウは未だビーバップハイスクールの世界から完全に抜けきれていないような、古い不良の臭いを醸し出していた。
(うわ、なんだコイツ、怖い怖い…)
タイトなスリムジーンズにロックTシャツで通学するロック少年のツカサには、タックが入ったやたらと太いパンツ「ボンタン」で自己主張をする輩が理解できない。
ツカサの学校は制服はあるが着用の義務はなかったため、多くの生徒が私服で登校していたのだ。
高校になると中学よりも地域が広がる。
その都心から少し離れた地域から来ている奴らの中には、未だにそういう臭いが残る輩がいるのが、元々都心出身のツカサには滑稽だった。
「多分知らないよ。」
クールにイヤフォンを外しながらツカサはそう答えた。
「何?洋楽?」
「まあね…。」
(ウザいな…)
「俺、詳しいから言ってみろよ?」
(しつけーな…
態度デカイけどどうせ僕よりは知らないんだろ…!?)
心の中でそうつぶやきながら、食い下がるシュウを上目遣いで見るツカサ。
「MOTLEY CRUE って知ってる?」
これでコイツが知らなければ説明という面倒臭いオプションに移行することになる。
実際シュウからは古い不良の臭いはしても、本物のバッド・ボーイ・ロックの匂いは一切してこない。
ところが期待していなかった答にツカサは面を食らった。
「おぅー!知ってるよ!
大好きだよ!」
「…!!!
おぉー!!!
マ、マジで!?」
「おぅ!
何?『フィールドグッド』?」
「あ、ああ…。」
正しくは『フィールグッド (feelgood)』だが…。(苦笑)
この際置いておく。
鬱陶しいと思っていたツカサの心は一転、好きなバンドが同じ友の突然の出現に、脳内では急速にアドレナリンが大噴出していた。
ここでシュウが更に意外な事実を口にした。
「俺、中学んときからドラムやってんだよ!
トミー・リーみたいなドラマーになりたくってよ!」
この事実にギターを弾いていたツカサの興奮は一気に最高潮に達した。
「おぉー!
僕も中学のときからギター弾いてるんだよ!」
聞けばシュウは日本のバンド、"SIKKY" のファンで、その影響から MOTOLEY CRUE や HANOI ROCKS にも興味をもつようになったらしい。
ツカサは SIKKY には興味はなかったが、どうやらモトリーやハノイを公然とパクっているバンドらしいという知識はあった。
(なるほど、そういうことか…)
ツカサはそのことには若干の嫌悪感を抱きつつも、モトリーに本気になっているシュウに CD を貸したりテープをダビングしたりするようになっていく。
<つづく>
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