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『俺、鳩川だから!』
・第2話 <拉致>
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「おい、お前、それお前のギター?」
ある日の放課後、シュウがクラスの中でもあまり目立たない、背が低くて小太りな川口に声をかけていた。
シュウももう「制服」ではなく私服で登校するようになっていたが、ハタから見るとやはり不良が気の弱そうな生徒を脅しているようにも見える。
実際に川口の表情は怯えているようにも見えるし、シュウはそんな川口をみて嘲笑うかのようだ。
ツカサが2人の様子を見ているのに気づいたのか、川口は助けを求めるような表情でツカサを見つめる。
(しょうがねーな…(苦笑))
ゆっくりと2人の方に向かうツカサに今度はシュウが大声で話しかける。
「おいツカサー!コイツギター持ってきてるぜ!」
(見ればわかるし声がデカくてさっきから聞こえてるって…(苦笑))
「みたいだね…。」
少し離れたところから歩きながら応じるツカサ。
「コイツ、軽音入って買ったんだってよ!」
「へー、そうなんだー。高校入って始めたの?」
2人の元に辿り着いたツカサは救いを求めていた川口に話しかける。
「う、うん…。」
(助かった!)
川口の表情からは明らかにそんな安堵感が感じられる。
(別に拉致られる訳じゃあるまいし…(苦笑))
ツカサはそう思ったが、ある意味それに近いことの実行犯に自らもなってしまう…。
「おい、これから練習なんだろ?
ちょっと借してくんねー?
ツカサ、お前、弾けんだろ?」
シュウが狙ってましたとばかりに言い始める。
「いや、弾けるけど、それじゃ可哀想だろ…。」
川口の表情がさらにワントーン暗くなった。
川口はシュウとよくツルんでいるツカサに助けを求めたかったが、ツカサがギターを弾けることも、シュウがドラムを叩くことも川口は知らなかったのだ…!
「でもどうせコイツら弾けねーんだぜ?
そうだろ?
ちょっとならいいだろ?」
やはりシュウは最初から練習を乗っ取ること画策していたようだ。
なんて奴だ…。
「え…。う、うん…。」
川口は早くも観念してしまった。
「おいおい、いいのかよ!?」
あまりの諦めの早さに「断ってもいいんだぞ?」とツカサが確認する。
「うん、少しなら…。」
「じゃー30分でいいからよー。
俺たちが手本見せてやるよ!」
そう言ってシュウはまた嘲笑うかのような表情だ。
(手本て…)
ツカサは自分が所詮「中学生のビギナーレベルに毛が生えた程度の高校生」とわかっているだけに、シュウの自信には半ば呆れてしまったが、しかしいい機会であることは確かだ。
ここは川口には悪いが、練習に乱入できることにはワクワクしていた。
「じゃー練習室に行こうか。
悪いけど借りるね。」
さっきまで助けてくれると思っていたツカサにギターを渡してうなだれる川口。
きっと川口がツカサに助けを求めなくとも、シュウが強奪していたのは間違いないが…。
人生は時として、どう足掻いても結果が決まっていることもあるのだ。
<つづく>
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