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『俺、鳩川だから!』
・第3話 <キックスタート>
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「お待たせ!そっちはどうだ?」
セッティングを終え、堂々とドラムセットに陣取るシュウがツカサに声をかける。
「こっちは大丈夫だよ。」
川口の真新しいギターを肩から下げて答えるツカサ。
(しかしダッセーギターだな…!)
そのギターの外観までもが川口の人となりを表しているかのようで、哀れにすら思えてくる。
練習室とは名ばかりの古い教室には、シュウとツカサ以外には、実際に練習するはずだった3人、川口と山田と水野が即席ギャラリーよろしく、行儀よく椅子に腰掛けていた。
「じゃー何やる?
モトリーでできるのある?」
「『GIRLS, GIRLS, GIRLS』からなら何曲かできるけど…。
チューニング1音下げになってないしな…。」
MOTLEY CRUE の原曲は全て楽器を1音下げてチューニングされているので、原曲キーに拘るツカサには気になるところだが、シュウはそんなことには構いもしない。
「それ、聴いてないかも。
試しに弾いてくれよ。」
(貸した CD まだ聴いてないのかよ…)
「こういうやつだけど…。」
ツカサは心の中の声を抑えてそう言うと、ノーマルチューニングのギターで、1音高い「Wild Side」のリフを弾き始めた。
「おい、それ、"SIKKY" の曲だろ?」
「え?違うよ。
モトリーの「Wild Side」だよ。」
怪訝な顔をするツカサに対してシュウはちょっと面を食らったような表情だ。
(そっかー、パクってる元ネタだったのか…)
しかしオリジナルの「Wild Side」を知らないシュウは無謀にも、オリジナルを弾くツカサにパクりのコピーで合わせてみせる。
合っているようで合っていない、でも合っている気もしてくる。
高校入学レベルのジャムとしては悪くはないだろう。
だがしかし続かない。
これも高校入学レベルのジャムとしては仕方がないだろう。
そんな状況に痺れを切らしたかのように、
「おい、『フィールドグッド』からやろうぜ!
「Kickstart」できない?」
と、シュウは宣言するように言ってみせた。
(だから『フィールグッド』だっちゅーの!)
心の中ではいちいち訂正しつつ、ツカサが答える。
「ちゃんとコピーしてないからコードなぞってなんとなくなら…。」
「それでいいよ、やろうぜ!」
まったく強引な奴だ。
シュウがカウントを出す。
ツカサはとりあえずそれらしくリフを弾き始める。
途中、ギターが怪しくなるが、今度は2人とも知っている同じ曲を弾いている。
変な止まり方をする事もなければ、途中から始めることも可能だ。
少なくとも先ほどよりはマシな状況に、2人とも上機嫌になっている。
ギャラリーの3人は、何とも言えない表情で固まってしまっているが、もはや2人にはそんなことはお構いなしだ。
しかしこの後に起こる事態には、シュウとツカサの2人だけではなく、ギャラリーの3人にもまったく想像だにできなかった…。
<つづく>
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