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『俺、鳩川だから!』
・第5話(最終回) <看板>
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「ありがとうございました!」
ツカサはスーパーのレジで会計を済ませてお店を出た。
お店の中は冷房が効くようになり、一歩外へ出ると汗ばむような季節になってきた。
(アイスでも食べたいな…。)
汗が出るのを避けるように、日影を探しながらゆっくりと歩くツカサの視界に、とてつもなく暑苦しい顔、タレントのジミー大東にソックリなタラコゴリラが入ってきたではないか…!
その距離を縮めるように自転車に乗ってツカサに近づくタラコゴリラ……
由紀男だ……。
どうやら由紀男の視界にもツカサが捕えられたらしい。
由紀男のタラコゴリラ号は真っ直ぐツカサの前で停車する。
「君、この辺だったの?」
「そうですけど…。」
(うっせーな…関係ないだろ…
この辺だからこんなところで買い物してんだろ、大馬鹿野郎が!)
この前のことを思い出すと、その顔を見るだけでもイライラする。
シュウだけではなく、ツカサだって恥をかかされているのだ。
まったく、嫌なところで嫌な奴に会ったものだ。
「この辺なんすか?」
黙っているわけにもいかないので、ツカサは一応大人な対応で返す。
そうしたらこのタラコゴリラが胸を張ってこう答えた。
「うん!俺、鳩川だから!」
(は?鳩川???
だから何なの?別に名前は聞いてないぞ!?)
「え…?
はぁ…?そうなんですか…。」
「え?
俺、鳩川だよ?」
ツカサのリアクションに不満だったのか、由紀男はとある方角を指差して、またもや必死に名前をアピールする。
(なんだコイツは…!?
だいたい名前だけで家がわかるっていうのか?)
「…。はぁ…。」
(これは単なる自己紹介なのか?何なのか!?)
「俺、鳩川なんだけどな…。」
よっぽど自分が知られていないことがショックだったのか、自転車で走り去る鳩川の背中は寂しげだった。
(なんでアイツはあんなに名前を強調したんだ?)
(名前で家がわかる訳ねーだろ…)
(つーか普通教えたくねーだろ…)
由紀男のことを変な奴だと思いながら帰路につくツカサの目の前に、選挙ポスターの看板が現れた。
『自慢党 鳩川草夫』
この鳩川みたいに豪邸を持っている世襲の有名政治家じゃあるまいし、普通名前だけで家まで特定できる訳ねーっつーの!
あれ……??
え……??
チョマテヨ……!?!?!?
鳩川……??
「俺、鳩川だから!」って言ってたよな!?!?!?
えぇ??
「鳩川草夫」???
ま、まさかぁー…!?!?!?
大通りの奥には、鳩川家の豪邸、鳩川邸がある。
ま、まさか、アイツの言ってた鳩川って、あの鳩川のことだったのかー…!
しかしあそこに人は住んでいるのか?
いや、住んでなくても周辺に住めるビルやマンションくらい持ってても不思議じゃない。
うーん…!
いや、マジかー…!
しかしその日から高校を卒業するまでに、ツカサは学校でも家の近所でも、自称鳩川のタラコゴリラ由紀男に逢うことは二度となかった…。
<おわり…だけどあとがきへつづく>
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